「アパート経営を始めたはいいけれど、一体いつ売るのが一番良いのだろう?」
「購入時よりも高く売って、しっかり利益を確定させたい」
「もしもの時のために、損切りすべきタイミングも知っておきたい」
不動産投資を始めたサラリーマン投資家の方から、このようなご相談をいただくことがよくあります。
不動産投資は、家賃収入によるインカムゲインだけでなく、物件を売却して得るキャピタルゲイン(売却益)も合わせたトータルリターンで成否が決まります。つまり、アパート経営における「出口戦略」こそが、投資成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
しかし、本業で忙しい中、複雑な不動産市況や税金のルールをすべて把握し、最適な売却タイミングを一人で見極めるのは至難の業です。
この記事では、不動産投資の専門家として、収益物件の売却で後悔しないための5つの具体的なタイミングを、「利益確定」と「リスク回避」の2つの側面から徹底解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたにとって最適な売却の判断軸が明確になり、自信を持って次のステップに進むことができるはずです。
【この記事はこんな人におすすめ】
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【目次】
- 【利益確定編】収益物件を高く売るための3つの売却タイミング
- 【リスク回避編】アパート経営で損切りを判断すべき2つのタイミング
- 売却タイミングを見極めるための具体的なアクションプラン
- まとめ:最適な売却タイミングを見極め、不動産投資を成功に導こう
Contents
【利益確定編】収益物件を高く売るための3つの売却タイミング
ここからは、できるだけ高く売ることで、しっかりと利益確定するための3つの売却タイミングについて解説します。不動産投資の成功は、これらのタイミングをいかに捉えるかにかかっています。
タイミング1:不動産市況が良い時(金利・価格動向)
最もシンプルで分かりやすいのが、不動産市況が活況なタイミングです。需要が供給を上回れば、物件価格は自然と上昇し、高く売るチャンスが広がります。
具体的には、以下の2つのポイントに注目しましょう。
- 低金利の時期:
金利が低いと、買主は融資を受けやすくなり、不動産を購入しようという意欲が高まります。結果として市場にお金が流れ込み、物件価格が上昇する傾向があります。今後の金利変動、特に金利上昇が予測される局面では、低金利である現在のうちに売却する、というのも有効な出口戦略の一つです。 - 不動産価格が上昇している時期:
国土交通省が発表する「不動産価格指数」などを参考に、価格が上昇トレンドにあるかどうかを確認します。メディアで不動産投資に関するポジティブなニュースが増えた時期も、市場が活況であるサインと捉えることができます。
市況は常に変動するため、日頃からニュースや市場レポートに目を通しておくことが重要です。
タイミング2:節税メリットが薄れる「減価償却」終了前 ※
減価償却も、収益物件の売却タイミングを考える上で非常に重要な要素です。
減価償却とは、建物の購入費用を、法的に定められた耐用年数に応じて分割し、毎年経費として計上できる仕組みのことです。この減価償却費のおかげで、帳簿上の利益を圧縮し、所得税や住民税を抑える効果が期待できます。
しかし、この減価償却期間が終わると、経費として計上できる金額がなくなり、帳簿上の利益が急に増えてしまいます。その結果、手元に残るキャッシュフローは変わらないのに、税金の負担だけが重くなるという事態に陥るのです。
特に、中古の木造一棟アパートなどは法定耐用年数が短いため、購入後数年で減価償却が終わるケースも少なくありません。一棟アパートを減価償却後に売却するのではなく、その節税メリットが薄れる前が、一つの売り時と言えるでしょう。
※ 法人での所有は想定されていません。
タイミング3:税率が有利になる「5年超」の保有期間
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には、譲渡所得税という税金がかかります。この税率は、物件を所有していた期間によって大きく異なる「5年ルール」が存在することをご存知でしょうか?
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 税率 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 税率 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
※復興特別所得税を含みます。
ご覧の通り、所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が約2倍も変わります。この「5年」は、売却した年の1月1日時点でカウントされる点に注意が必要です。
例えば、2020年10月に購入した物件の場合、5年後である2025年10月以降に売却すれば良い、と考えるのは早計です。正しくは、2026年1月1日を迎えて初めて「所有期間5年超」とみなされます。
不動産投資を5年で売却する場合の税金を考えると、この5年ルールを意識するかどうかで、手元に残る利益が大きく変わってきます。特別な理由がない限りは、長期譲渡所得の税率が適用されるタイミングを待って売却するのが賢明です。
※税金の詳細な計算については、必ず税理士などの専門家にご相談ください。
【リスク回避編】アパート経営で“損切り”を判断すべき2つのタイミング
不動産投資は常に順風満帆とは限りません。時には、損失の拡大を防ぐために「損切り」という決断が必要になる場面もあります。ここからは、将来的なリスクを回避するためのアパート経営の出口戦略について解説します。
タイミング4:アパート経営の思いがけない支出が増えて、キャッシュフローがマイナスに
アパート経営の出口戦略を考える上では、「収入」だけでなく「支出」の管理も非常に重要です。特に、以下のような支出の増加がキャッシュフローの悪化を招き、損切りの検討理由となるケースがあります。
- 経年と突発的な「修繕費」の増加
まず、築年数が経過することで「修繕費」は増加していくのが一般的です 。定期的なメンテナンス費用 に加え、給湯器の故障や自然災害 など、思いがけない突発的な修繕コストが発生し 、経営が赤字(キャッシュフローがマイナス)になる可能性もあります 。
こうした将来の費用増や予測不能な出費に備えるためには、毎月の家賃収入の一部を「修繕積立金」として計画的に積み立てておくと安心です 。また、万が一の災害に備え、火災保険や地震保険への加入も必ず行っておきましょう 。
- 支出を圧迫する「金利上昇」
次に、ローンの「金利上昇」も、支出を増やす大きな要因です 。
特に「変動金利」で融資を借り入れている場合、世の中の金利が上昇すると、ローンの返済額も増加し、キャッシュフローを圧迫してしまいます 。このリスクを避けるため、例えば「10年固定」のように、一定期間金利が変わらないプランを選択するのも有効な対策の一つです 。
ローンの返済計画を立てる際は、現状の金利だけでなく、将来の金利上昇リスクも想定した上で、余裕を持ったシミュレーションを行うことが、長期的な安定経営の鍵となります 。
タイミング5:空室増などで収入が減ってキャッシュフローが悪化した時
アパート経営の根幹を支えるのは、安定した家賃収入です。しかし、以下のような理由でキャッシュフローが悪化し、改善の見込みが立たない場合は、損切りを検討すべきサインかもしれません。
- 周辺に競合となる新築物件がたくさんできた
- 大学の移転や工場の閉鎖で、地域の賃貸需要がおおきく減少した
- 事件などによって事故物件になってしまった
空室が続くと、家賃収入が減るだけでなく、募集のための広告費などの経費がかさみ、赤字経営に陥るリスクが高まります。
「もう少し待てば状況は好転するはず」と楽観視し続けると、損失がさらに拡大してしまう可能性があります。冷静に物件の収益性を分析し、回復が難しいと判断した場合は、早めに売却して損失を最小限に食い止めることも、重要な出口戦略です。
売却タイミングを見極めるための具体的なアクションプラン
ここまで5つのタイミングをご紹介しましたが、「自分の物件は一体いつが売り時なんだろう?」と悩まれる方も多いでしょう。ここでは、具体的なアクションプランを2つご紹介します。
まずは「収益物件の売却査定」で現在価値を知る
最適な売却タイミングを見極める第一歩は、「自分の物件が今いくらで売れるのか」という客観的な価値を把握することです。
不動産会社に依頼すれば、無料で収益物件の売却査定をしてもらえます。査定額を知ることで、これまでの運用成果を具体的に確認できますし、市況が良いのか悪いのかを肌で感じることもできます。
複数の会社に査定を依頼し、その根拠を比較検討することで、より精度の高い相場観を養うことができます。すぐに売却するつもりがなくても、定期的に査定を受けて資産価値を把握しておくことは、全ての不動産投資家にとって非常に重要です。
「買い替え」で資産を最適化する選択肢
売却は、単に利益を確定させたり、損切りしたりするだけが目的ではありません。現在の物件を売却した資金を元手に、より収益性の高い物件や、将来性のあるエリアの物件に乗り換える「買い替え(資産の組み換え)」も、非常に有効な出口戦略です。
例えば、減価償却期間が終わりそうな物件を売却し、新たに築浅の物件を購入することで、再び減価償却による節税メリットを享受するといった戦略が考えられます。
現在の資産状況と将来の目標を照らし合わせ、ポートフォリオを最適化していく視点を持つことが、長期的に不動産投資で成功するための鍵となります。
まとめ:最適な売却タイミングを見極め、不動産投資を成功に導こう
今回は、不動産投資における売却のタイミングについて、5つの具体的な見極め方をご紹介しました。
利益確定のための売却タイミング
1. 不動産市況が良い時: 低金利や価格上昇の波に乗る
2. 減価償却期間が終わる前: 節税メリットを最大限に活かす
3. 所有期間が「5年」を超えた後: 譲渡所得税の負担を軽減する
リスク回避(損切り)のための売却タイミング
4. 思いがけない支出増でキャッシュフローが悪化した時 : 損失の拡大を防ぐ
5. 空室増などの収入減でキャッシュフローが悪化した時: 損失の拡大を防ぐ
不動産投資の成功は、購入時だけでなく、売却という「出口」まで見据えて戦略を立てることで初めて実現します。今回ご紹介した5つのタイミングを参考に、ご自身の物件の状況やライフプランと照らし合わせ、最適な出口戦略を描いてみてください。
「自分の物件の価値を具体的に知りたい」
「プロの視点から、最適な売却タイミングについてアドバイスが欲しい」
もし、そうお考えでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。豊富な経験を持つ専門家が、あなたの不動産投資を成功に導くためのお手伝いをさせていただきます。


