一棟アパート売却査定の「罠」と正しい会社選びの全知識 | 収益物件の査定価格の妥当性を見極める方法

一棟アパート売却査定の「罠」と正しい会社選びの全知識 | 収益物件の査定価格の妥当性を見極める方法

不動産投資に興味を持ち始めた、あるいは既にアパート経営をされている皆様へ。

「将来の不安に備えて資産形成をしたい」
「所有している一棟アパートを、いつか売却する時は、なるべく高く売りたい」
「でも、売却なんて初めてで、何から始めればいいか分からない」

本業でお忙しい中、このような漠然とした不安や疑問をお持ちではないでしょうか。

不動産投資において「売却(出口戦略)」は、購入時と同じ、あるいはそれ以上に重要なプロセスです。なぜなら、最終的な投資の「成功」は、売却によって利益を確定するまで決まらないからです。

しかし、いざ売却を考えたとき、「査定価格」が妥当なのか、どの不動産会社を信じれば良いのか、判断に迷う場面が必ず訪れます。特に、「他社より圧倒的に高い査定額」を提示されたら、嬉しさの反面、不安になりませんか?

この記事では、不動産投資の成功を左右する「売却」に焦点を当て、特に一棟アパートのような収益物件の「査定方法」の基本から、「査定価格の妥当性」を見極めるポイント、そして「信頼できる不動産会社の選び方」まで、専門家の視点で分かりやすく解説します。

この記事を読めば、売却に対する漠然とした不安が解消され、大切な資産を安心して任せられるパートナー選びの基準が明確になるはずです。

【この記事はこんな人におすすめ】

  • 不動産投資の「出口戦略」について具体的に考え始めた方
  • 所有する一棟アパートや収益物件の「適正な売却価格」を知りたい方
  • 提示された「査定額」が高いのか安いのか、妥当性を判断する基準が欲しい方
  • 売却を任せる不動産会社を「どう選べばいいか」迷っている方
  • 「高値査定の罠」といった言葉を聞き、失敗したくないと強く思っている方

【目次】

  1. なぜ「売却」が不動産投資の成否を分けるのか?
  2. 収益物件の査定方法、基本の2つを徹底解説
  3. 一棟アパート売却査定の「罠」 – 高値査定を鵜呑みにしてはいけない理由
  4. 収益物件の査定価格の「妥当性」を見極める3つのポイント
  5. 成功の鍵を握る!一棟アパート・収益物件の売却に強い不動産会社の選び方
  6. 【補足】知っておきたい媒介契約の種類と「囲い込み」のリスク
  7. まとめ:大切な資産の売却は、信頼できるパートナー選びから

 

Contents

なぜ「売却」が不動産投資の成否を分けるのか?

不動産投資の利益には、家賃収入である「インカムゲイン」と、物件を売却した時の売却益である「キャピタルゲイン」の2種類があります。

毎月のキャッシュフロー(インカムゲイン)を積み上げることはもちろん大切ですが、投資全体のトータルリターンは、最終的に「いくらで売却できたか」によって大きく左右されます。

例えば、いくら毎月利益が出ていても、市況の悪化や建物の劣化により、購入時より大幅に安い価格でしか売れなければ、トータルでは損失になってしまう可能性もあります。

逆に、適切なタイミングで、適切な価格で売却できれば、それまでの家賃収入に加えて大きな売却益を手にすることも可能です。

つまり、不動産投資は「買って終わり」ではなく、「売却」という出口を迎えて初めて、その投資が成功だったかどうかが確定するのです。だからこそ、売却のプロセス、特にその入口となる「査定」と「会社選び」は、細心の注意を払う必要があります。

収益物件の査定方法、基本の2つを徹底解説

収益物件の査定方法、基本の2つを徹底解説

収益物件の査定方法、基本の2つを徹底解説

ここからは、皆様が所有する(あるいは将来所有する)一棟アパートのような「収益物件」が、どのように査定されるのか、その基本的な方法について解説します。

ご自身が住むための「居住用不動産」とは、査定の「モノサシ」が根本的に異なります。この違いを理解することが、収益物件の査定方法を知る第一歩です。

査定方法1:収益還元法(その物件がどれだけ稼げるか)

収益還元法とは、その名の通り「その不動産が将来どれだけの収益(家賃収入)を生み出すか」という点に着目して価値を算出する方法です。投資家が最も重視する「利回り」に基づいた計算方法と言えます。

この方法には、さらに「直接還元法」や「DCF法」といった詳細な計算方法がありますが、ここでは「稼ぐ力=価値」というシンプルな理解で問題ありません。

例えば… 年間の家賃収入が500万円の物件と、300万円の物件では、当然ながら前者の方が高く評価されます。また、同じ家賃収入でも、空室リスクが低い(常に満室に近い)物件は、より安定した収益が見込めるため、価値が高いと判断されます。

投資用不動産の売却査定において、この収益還元法は最も重要な指標の一つです。

査定方法2:積算法(同じものを今作るといくらか)

積算法(コストアプローチとも呼ばれます)は、「今、その物件と土地を調達し、同じ建物を建てた場合に、いくらかかるか」というコストの面から価値を算出する方法です。

具体的には、土地の価格(路線価や公示価格など)と、建物の価格(再調達価格から経年劣化分を引いたもの)を足し合わせて計算します。

この方法は、特に金融機関が融資の際の担保評価として用いることが多いですが、注意点もあります。それは、「積算価格=市場で売れる価格」とは限らないことです。

例えば、地方で土地が安く、立派な建物を建てた場合、積算価格は高く出るかもしれません。しかし、そのエリアに賃貸需要(稼ぐ力)がなければ、収益還元法での評価は低くなり、結果として投資家からは選ばれにくくなります。

実際には「市場の需要」が価格を決める

ここまで2つの基本的な収益物件の査定方法を解説しました。しかし、実際の売却価格は、これらの計算だけで決まるわけではありません。

最終的には、近隣の「取引事例」(いくらで売買されたか)や、その時々の「市場の需要」(買いたい人がどれだけいるか)、「金利動向」などが複雑に絡み合い、「買い手が納得して支払う価格」に着地します。

プロの不動産会社は、これらの複数の指標を組み合わせて、「売れる可能性が最も高い価格帯」として査定価格を提示します。

査定額の妥当性をチェックする前に、そもそも「今が売却に適した時期なのか?」を客観的に判断することも重要です。

市場のサイクルやご自身の保有期間(税制面)から見た最適な売却タイミングと出口戦略の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。

リンク:【保存版】不動産投資の売却タイミングはいつ?アパート経営の出口戦略と見極め方

一棟アパート売却査定の「罠」 – 高値査定を鵜呑みにしてはいけない理由

不動産会社に査定を依頼すると、驚くような「高値」を提示してくる会社に出会うことがあります。大切な資産が高く評価されるのは嬉しいことですが、ここで冷静になる必要があります。

一部で「一棟アパートの査定は、高いだけでは意味がない」と言われるように、その高値査定には「罠」が隠されている可能性があるからです。

理由1:単に「媒介契約」が欲しいだけ

不動産会社にとって、売主から「売却の依頼(媒介契約)」をもらうことは、ビジネスの第一歩です。

残念ながら、中には売却を依頼してもらうためだけに、あえて相場よりも著しく高い査定額を提示する会社も存在します。彼らの狙いは、売主の「高く売りたい」という期待感を利用して、まずは契約を取り付けることです。

しかし、相場からかけ離れた価格で売りに出しても、買い手は見つかりません。 結果として、売却活動が長引き、最終的には「この価格では売れないので、値下げしましょう」と、大幅な価格変更を迫られることになりかねません。これは売主にとって、貴重な時間と機会の損失です。

理由2:「売れる価格」と「査定価格」は違う

そもそも「査定価格」とは、不動産会社が「このくらいの価格なら売れるだろう」と算出した「意見」や「目安」に過ぎません。

いくら高い査定額が提示されても、その価格で実際に購入する買い手(投資家)が現れなければ、それは「絵に描いた餅」です。

一棟アパートの査定価格の妥当性を見極めず、高値査定に踊らされて売り出し価格を高く設定しすぎると、市場から「割高な物件」と認識され、投資家の検討対象から外されてしまいます。

 

一棟アパートの査定価格の「妥当性」を見極める3つのポイント

一棟アパートの査定価格の「妥当性」を見極める3つのポイント

一棟アパートの査定価格の「妥当性」を見極める3つのポイント

では、提示された査定額が妥当かどうか、私たちはどう判断すればよいのでしょうか。これは、一棟アパート(収益物件)の不動産査定書の見方としても重要な、3つのポイントです。

ポイント1:「査定額の根拠」が明確で、納得できるか

最も重要なのが、「なぜ、その査定額になったのか?」という根拠です。

信頼できる不動産会社は、必ず「査定報告書」や「提案書」を準備し、その価格の算出根拠を具体的に説明してくれます。

  • 収益還元法では、どのくらいの利回りを想定しているか?
  • 積算法では、土地と建物をそれぞれいくらと評価したか?
  • 近隣の類似物件の取引事例はどれか?
  • 現在の市場動向をどう分析しているか?
  • 想定する家賃収入が適正かどうか?

これらの説明が曖昧で、ただ「高く売れますよ」としか言わない場合は注意が必要です。査定額の根拠が明確であることは、信頼の最低ラインと心得ましょう。

ポイント2:リスクやマイナス面も説明してくれるか

良いことばかりを言う担当者も注意が必要です。不動産には必ずプラス面とマイナス面(リスク)があります。

例えば、
「建物の築年数が古いため、修繕履歴が買い手から厳しく見られます。」
「最寄り駅から距離があるため、このエリアの類似物件より利回りを少し高めに設定しないと買い手が見つかりにくいかもしれません。」
といった、マイナス面や売却時の懸念点も隠さずに説明し、その上で「だから、こういう戦略で売りましょう」と提案してくれる会社は、信頼できる可能性が高いです。

ポイント3:複数の会社に査定を依頼し、比較検討する

一棟アパートの売却査定を依頼する際は、必ず2~3社以上の複数の会社に依頼し、比較検討(相見積もり)することをお勧めします。1社だけの査定では、その価格が高いのか安いのか、妥当なのかどうか、判断のしようがありません。

ただし、注意点があります。それは、「査定額の高さ」だけで比較しないことです。前述の通り、高値査定には意味がない場合もあります。

比べるべきは、「価格」ではなく、「価格の根拠」と「売却戦略」、そして「担当者の対応」です。各社の査定報告書を見比べ、どの会社が最も納得のいく説明をしてくれたかで判断しましょう。

 

成功の鍵を握る!一棟アパート売却を任せる会社の選び方

査定価格の妥当性を見極めたら、次は「誰に売却を任せるか」という、不動産投資(一棟アパート)の売却における会社の選び方のフェーズです。これも投資の成功を左右する極めて重要な選択です。

選び方1:「収益物件・一棟物件の売却」を専門にしているか

一棟アパートの売却に強い会社を探す上で、これが最も重要かもしれません。

不動産会社と一口に言っても、得意分野は様々です。

  • 居住用のマンションや戸建ての仲介が得意な会社
  • 土地の売買が得意な会社
  • 賃貸の仲介がメインの会社
  • そして、一棟アパートや収益物件といった「投資用不動産」の売買が専門の会社

一棟物件の売却を専門にしている会社は、一般的な不動産会社とは異なるノウハウを持っています。なぜなら、買い手が「投資家」だからです。

投資家が物件を見るとき、「利回り」や「融資のつきやすさ」、「将来の出口戦略」といった特有の視点で評価します。この投資家目線を理解していない会社に依頼してしまうと、物件の真の価値(魅力)を買い手に伝えきれず、売却に苦戦する可能性があります。

選び方2:独自の「投資家リスト」を保有しているか

専門性の高い会社は、日頃から付き合いのある個人の富裕層や不動産投資法人など、独自の「投資家リスト」を持っています。

一般的な売却活動では、「レインズ」(不動産会社間の情報システム)に登録し、広く買い手を探します。しかし、優良な収益物件の場合、表の市場(レインズ)に出る前に、この独自のリスト内で「水面下」で売買が成立することも少なくありません。

あなたの物件の特性を理解し、それを「欲しい」と思ってくれそうな投資家へ直接アプローチできる会社は、それだけ「早く」「高く」売却できる可能性を秘めています。豊富な売却実績も、こうしたリストの質を示す指標になります。

選び方3:買い手の「融資付け」に精通しているか

収益物件、特に一棟アパートのような高額な物件は、ほとんどの買い手が金融機関からの「融資(ローン)」を利用して購入します。

ここで問題になるのが、「買いたい」という人が現れても、その人の「融資が通らなければ、売買は成立しない」という点です。

一棟アパートのような収益物件の売却における融資付けに強い会社は、多くの金融機関と良好な関係を築いています。「この物件なら、この属性の買い手なら、あの銀行が融資してくれる可能性が高い」といったノウハウを持っています。

売主であるあなたには直接関係ないように思えるかもしれませんが、この「融資付け」の力こそが、スムーズな売却を実現するための生命線となるのです。

選び方4:信頼できる担当者かを見極める

不動産売却における担当者の見極め方も大切です。最終的には「人」対「人」です。 以下の点をチェックしましょう。

  • レスポンス(返信や対応)が早いか
  • 専門用語を分かりやすく説明してくれるか
  • あなたの不安や疑問に、面倒くさがらずに答えてくれるか
  • 売主の利益を最優先する姿勢(誠実さ)が感じられるか

本業で忙しい皆様に代わって、大切な資産の売却を任せるパートナーです。「この人になら任せられる」と心から思える担当者を見つけることが、売却成功の近道です。

信頼できるパートナー(不動産会社)が見つかれば、次は「物件の商品力」を高めるフェーズです。

満室稼働に向けた対策や、物件の第一印象を良くする清掃など、パートナーと協力して進めたい「一棟アパートを高く売るための準備」については、こちらを参考にしてください。

リンク:一棟アパートを高く売るコツとは?不動産投資の売却益を最大化する「タイミング」と「準備」を徹底解説

 

【補足】知っておきたい媒介契約の種類と「囲い込み」のリスク

最後に、不動産会社に売却を依頼する際に交わす「媒介契約」について、基礎知識と注意点を補足します。

媒介契約3種類(一般・専任・専属専任)の違い

媒介契約には、主に以下の3種類があります。

  1. 一般媒介契約
    • 複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる。
    • 自分で買い手を見つけること(自己発見取引)も可能。
    • 一方で、不動産会社側の売却活動への熱意が分散しやすい側面も。
  2. 専任媒介契約
    • 1社の不動産会社にのみ売却を依頼する。
    • 自分で買い手を見つけることは可能。
    • 不動産会社は2週間に1回以上の業務報告義務があり、責任感が強まる。
  3. 専属専任媒介契約
    • 専任媒介とほぼ同じだが、自分で買い手を見つけることも禁止される。
    • 不動産会社は1週間に1回以上の業務報告義務があり、最も拘束力が強い。

どの契約を選ぶべきかは、物件の特性や売主の戦略によりますが、専任媒介専属専任媒介で1社に絞り、手厚いサポートと積極的な売却活動を期待するケースも多いです。

「囲い込み」が売主にもたらすデメリットとは

ここで注意したいのが「囲い込み」とは何か、という問題です。

「囲い込み」とは、専任媒介などで依頼を受けた不動産会社が、売主と買主の双方から仲介手数料を得たい(これを「両手仲介」と呼びます)がために、他の不動産会社からの「買いたい」という問い合わせを意図的に断ったり、情報を隠したりする行為を指します。

もし「囲い込み」が行われると、あなたの物件は、その会社が見つけた買い手にしか売るチャンスがなくなり、「もっと高く買ってくれる」はずだった他の買い手を逃すことになります。これは売主にとって、大きな機会損失です。

「囲い込み」を避けるためにも、先の「会社選び」で解説したような、売主の利益を最優先に考え、誠実な売却活動(広く情報を公開し、最も良い条件の買い手を探す)を行ってくれる会社を選ぶことが不可欠です。

 

まとめ:大切な資産の売却は、信頼できるパートナー選びから

今回は、一棟アパートを中心とした収益物件の売却について、「査定方法」から「会社選び」まで、失敗しないための基礎知識を解説しました。

  • 不動産投資の成功は「売却(出口)」で決まる。
  • 収益物件の査定は「収益還元法(稼ぐ力)」が基本。
  • 「高値査定」には罠がある。価格の「根拠」こそが重要。
  • 査定価格の妥当性は、「根拠の明確さ」「リスク説明」「複数比較」で見極める。
  • 会社選びは「収益物件の専門性」「投資家リスト」「融資付けの強さ」が鍵。

本業でご多忙な皆様にとって、不動産投資の売却プロセスは複雑で、不安に感じることも多いかもしれません。 アパート経営の売却について相談をしたいと思っても、「まずは何から?」「誰に聞けば?」と立ち止まってしまうこともあるでしょう。

しかし、不安なまま、あるいは知識がないまま進めてしまうことが、一番のリスクです。

大切な資産の価値を最大化し、不動産投資を「成功」で終えるためには、信頼できる専門家(パートナー)のサポートが不可欠です。

まずは、ご自身が所有されている物件の「現在の価値」を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。その際、この記事でお伝えした「査定の根拠」や「会社の選び方」を、ぜひ思い出していただければ幸いです。

私たちは、収益物件の売買を専門とするプロフェッショナルとして、お客様一人ひとりの状況に寄り添った最適なご提案を心がけております。 査定のご依頼はもちろん、「まずは話だけ聞いてみたい」といった漠然としたご相談でも構いません。専門家にもっと詳しく聞いてみたいと感じた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。