一棟アパートを高く売るコツとは?不動産投資の売却益を最大化する「タイミング」と「準備」を徹底解説

一棟アパートを高く売るコツとは?不動産投資の売却益を最大化する「タイミング」と「準備」を徹底解説

不動産投資において、多くの投資家が「どの物件を“買う”か」という入口に最も注力します。しかし、すでに一棟アパートなどを所有し、賃貸経営を実践されているオーナー様ほど、「いつ、どのように“売る”か」という「出口戦略」の重要性を強く感じていらっしゃるのではないでしょうか。

不動産投資の最終的な成功は、運用中の家賃収入(インカムゲイン)だけでなく、売却時に得られる利益(キャピタルゲイン)を含めたトータルリターンで決まります。

しかし、物件の売却は、「市況が良いから」「たまたま良い買い手が見つかったから」といった“運”や“タイミング”任せにしてしまうと、本来得られるはずだった利益を大きく逃してしまう可能性があります。

収益物件の売却は、けっして博打ではありません。オーナー様ご自身が「戦略的に」物件の価値を高め、最高値で売却するための「具体的な行動指針(ノウハウ)」を理解し、準備・実行することが不可欠です。

この記事では、すでに収益物件(一棟アパート)をお持ちのオーナー様が売却益を最大化するために知っておくべき「高く売るための具体的なコツ」について、出口戦略のプロの視点から徹底的に解説します。 もちろん、これから不動産投資を始めようとお考えの方が「入口」の段階で知っておくべき「出口」の視点としても、必ず役立つ内容です。

この記事を読めば、漠然とした売却への不安が解消され、あなたの貴重な資産を「最高値」で売却するために今すぐやるべきことが明確になるはずです。

 

【この記事はこんな人におすすめ】

  • 既に一棟アパートを所有しており、最適な売却タイミングや「高く売るコツ」が知りたいオーナー様
  • 不動産投資の「出口戦略」について、具体的なノウハウを学びたい方
  • 運や市況任せにせず、戦略的に売却益を最大化したいと真剣に考えている方
  • これから収益物件を購入するにあたり、「出口(売却)」まで見据えた物件選びの視点を学びたい方
  • 現在所有している物件の価値を高める「バリューアップ」の方法に興味がある方

【目次】

  1. なぜ不動産投資に「出口戦略(売却)」が重要なのか?
  2. 収益物件(一棟アパート)を「高く売る」ための5つのコツ
  3. 売却益を最大化する「タイミング」の見極め方
  4. 一棟アパート売却時の注意点
  5. まとめ:出口戦略を意識した不動産投資で、資産形成を成功に導く

 

Contents

なぜ不動産投資に「出口戦略(売却)」が重要なのか?

すでにご実感されているオーナー様も多いかと存じますが、まず初めに、なぜ不動産投資において「出口戦略」がこれほどまでに重要なのか、その理由を改めて整理しておきます。

「売却益」と「運用益」でトータルの利益が決まる

不動産投資で得られる利益には、ご存知の通り「インカムゲイン(運用益)」と「キャピタルゲイン(売却益)」の2種類があります。

安定した家賃収入(インカムゲイン)を得ることは賃貸経営の基本ですが、不動産投資の最終的な成功は、このインカムゲインとキャピタルゲイン(売却益)の合計で決まります。

どれだけ運用中に利益が出ていても、売却時に大きな損失を出してしまっては、トータルでのリターンは大きく目減りしてしまいます。だからこそ、購入時から、そして運用中も常に「いかに高く売るか」を想定しておく出口戦略が不可欠なのです。

出口戦略に関わる「減価償却」と税金の仕組み

もう一つの重要な理由が「減価償却」です。 オーナー様も毎年、確定申告で「減価償却費」を経費として計上し、節税メリットを享受されてきたことと存じます。

しかし、出口戦略において注意すべきは、この減価償却費を計上し続けると、その分、帳簿上の「物件の取得価額」は年々下がっていくという点です。

【例】

  • 5,000万円で取得した物件(建物価格3,000万円)
  • 減価償却費を合計1,000万円計上した場合
  • 売却時の帳簿上の取得価額 = 5,000万円 - 1,000万円 = 4,000万円

この状態で4,500万円で売却すると、実際の購入額(5,000万円)より安く売っているにもかかわらず、帳簿上は「500万円の売却益(譲渡所得)」が出たことになり、税金がかかってしまいます。

節税メリットを享受できる期間(=減価償却期間)が終わると、逆に税負担が増える(あるいはキャッシュフローが悪化する)タイミングが訪れます。これも売却タイミングを戦略的に考える上で非常に重要な要素となります。

 

収益物件(一棟アパート)を「高く売る」ための5つのコツ

収益物件(一棟アパート)を「高く売る」ための5つのコツ

収益物件(一棟アパート)を「高く売る」ための5つのコツ

では、具体的に「一棟アパート」のような収益物件を高く売るためには、どのような「コツ」があるのでしょうか。オーナー様が「戦略的に」実行できる5つのポイントをご紹介します。

コツ1:物件の「バリューアップ」で収益性を高める

オーナー様もご経験の通り、収益物件の売却価格は、その物件が「どれだけ儲かるか(=収益性)」によって大きく左右されます。買い手は、利回りを最重要視します。

そこで重要になるのが「バリューアップ」、すなわち物件の価値を高める施策です。

  • 満室経営を目指す: 最も分かりやすいバリューアップは、空室をなくし「満室」にすることです。満室であれば、買い手は購入後すぐに安定した家賃収入を得られるため、高くても購入したいと考えやすくなります。
  • 家賃の適正化: 周辺の相場と比較し、もし家賃が安すぎる場合は、入居者入れ替えのタイミングなどで適正な家賃に設定し直すことも、物件の収益性を高める有効な方法の一つです。

コツ2:売却前に大規模リフォームは「不要」?修繕の適切な考え方

「高く売るために、売却前にリフォームした方が良いのでは?」と悩まれるオーナー様は少なくありません。

結論から言うと、売却益の最大化を目指す場合、必ずしも大規模なリフォームは必要ありません。なぜなら、買い手(特に投資家)は、自分の好みや投資戦略に合わせてリフォームしたいと考えることが多く、売主側でかけたリフォーム費用を、そのまま売却価格に上乗せできるとは限らないからです。

ただし、最低限の「修繕」は必須です。

  • 雨漏りや設備の故障など、明らかな瑕疵(かし:欠陥のこと)は修繕しておく。
  • 共用部(廊下、エントランス、ゴミ捨て場など)の清掃や整理整頓を徹底し、内見時の印象を良くする。

「リフォーム」ではなく、物件の「資産価値を維持する修繕」と「管理状態の良さをアピールする」ことが重要です。

コツ3:「レントロール」を整備し、物件の魅力を可視化する

「レントロール」は、買い手が物件の収益性を判断するための最も重要な資料です。これはオーナー様ご自身で(あるいは管理会社と協力して)準備できる、非常に強力な武器となります。

  • レントロールに空欄や不明点がないように正確に記載する。
  • 入居者の属性(法人契約、学生、社会人など)を明記し、安定した入居が見込めることをアピールする。
  • 過去の修繕履歴や点検記録なども合わせて提示できると、買い手の安心感に繋がり、評価が高まります。

これらの資料が整理されている物件は、「管理がしっかりしている優良物件」という何よりの証拠となり、高く売れる可能性が高まります。

コツ4:「買い手」の視点に立つ(融資付けのしやすさ、ストーリー)

買い手、特に一棟アパートを購入する投資家は、金融機関からの「融資(ローン)」を利用することがほとんどです。

つまり、「買い手が融資付けしやすい物件」であることが、高く売るための隠れたコツとなります。

  • 法定耐用年数が残っている(金融機関が融資期間を設定しやすいため)。
  • 違法建築などの問題がない。
  • (コツ3とも関連しますが)レントロールや修繕履歴がしっかりしており、金融機関が「事業性が高い」と判断できる。

また、「なぜこの物件は安定経営できているのか」といった「ストーリー」を語れることも強みになります。例えば、「近隣の〇〇大学の学生に人気で、毎年安定した入居がある」「リモートワーク需要に応えるためWi-Fi設備を導入したら入居率が上がった」など、物件の価値を高める具体的なストーリーは、買い手の購入意欲を後押しします。

コツ5:売却戦略を実行できる「パートナー(不動産会社)」を選ぶ

これまで「バリューアップ」や「レントロールの整備」など、オーナー様ご自身が実行できる「高く売るためのコツ」を解説してきました。

しかし、どれだけ物件の価値を高めても、その価値を買い手(投資家)に正しく伝え、最適な条件で売却をまとめてくれる「パートナー(不動産会社)」選びを間違えてしまうと、すべての努力が水の泡になりかねません。

特に一棟アパートのような収益物件の売却は、マイホームの売却とは全く異なり、専門的な知識が不可欠です。

  • その物件の「収益性」をどう評価するか?(査定方法)
  • 相場より高すぎる「査定の罠」を見抜けるか? 
  • 買い手の「融資付け」に精通しているか?

このような専門的なパートナー選びについては、それだけで1つの記事になるほど奥深いテーマです。

※詳しくはこちら「一棟アパート売却査定の「罠」と正しい会社選びの全知識

ここでは、「物件価値を高めること(コツ1〜4)」と「信頼できるパートナーを選ぶこと(コツ5)」が、売却益を最大化するための両輪である、とご理解ください。

売却益を最大化する「タイミング」の見極め方

「高く売るコツ」と並んで重要なのが、「いつ売るか」という「売却のタイミング」です。同じ物件でも、売るタイミング次第で手残りが数百万円、数千万円と変わることもあります。

タイミング1:不動産市況(高く売れやすい時期)

当然ながら、不動産市場全体が活況で、価格が上昇傾向にある時(いわゆる「売り手市場」)は、高く売れやすいタイミングと言えます。

  • 低金利が続いている時期(買い手が融資を組みやすいため)
  • 経済が好調で、投資マネーが不動産市場に流れ込んでいる時期

こうした市況感は、個人の力ではコントロールできません。日頃から経済ニュースや不動産市況に関心を持ち、専門家(不動産会社)から最新の情報を得ておくことが大切です。

タイミング2:税制面(「所有期間5年」の壁と譲渡所得税)

個人所有の不動産を売却して利益(売却益=譲渡所得)が出ると、それに対して「譲渡所得税」がかかります。 この税率は、物件の「所有期間」によって大きく変わるという重要なルールがあります。

  • 短期譲渡所得(所有期間が5年以下※): 税率 約39.63%
  • 長期譲渡所得(所有期間が5年超※): 税率 約20.315%

※売却した年の1月1日時点で判断されます。

すでにご存知のオーナー様も多いかと存じますが、所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が約2倍も変わってきます。

もし売却益が出る見込みなのであれば、この「所有期間5年」の壁を超えるまで待つ、というのが売却益(手残り)を最大化するための基本的なタイミング戦略となります。

【ご注意ください】 税金の計算は非常に複雑であり、個人の状況(減価償却の進捗、他の所得など)によって大きく異なります。売却のタイミングを検討する際は、必ず事前に税理士などの専門家にご相談ください。

タイミング3:個人の事情(キャッシュフロー、築年数)

市況や税制だけでなく、オーナー様ご自身の事情や物件の状態も、重要な売却タイミングの判断基準となります。

  • 減価償却期間が終わる頃: 前述の通り、減価償却による節税メリットがなくなると、税負担が増える(キャッシュフローが悪化する)可能性があります。このタイミングを一つの目安とする考え方もあります。
  • 大規模修繕が必要になる前: 築年数が古くなってくると、外壁塗装や給排水管の交換など、数百万単位の大規模修繕が必要になります。その費用を投下する前に売却する、というのも一つの出口戦略です。
  • ご自身のライフプランの変化: 「他の事業に資金を使いたい」「まとまった現金が必要になった」など、ご自身の状況変化も売却のタイミングとなり得ます。

短期譲渡所得などの税制面や、市場のサイクルを見極めることは、バリューアップと同じくらい手残りの金額に影響します。

「いつ売るのがベストか?」という売却タイミングの判断基準や、出口戦略の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

リンク:【保存版】不動産投資の売却タイミングはいつ?アパート経営の出口戦略と収益物件を高く売る5つの見極め方

 

一棟アパート売却時の注意点

最後に、一棟アパートを売却する際に、オーナー様が迷いやすい「注意点」を2つ解説します。

「満室」にして売るべき?「オーナーチェンジ」のメリット・デメリット

「高く売るコツ」で満室経営の重要性をお伝えしましたが、現実的には「満室にしてから売りに出す」べきでしょうか?

  • 満室で売るメリット: 収益性が最大化されており、買い手に「優良物件」と評価され、高く売れやすい。
  • 満室で売るデメリット: 満室にするまでに時間がかかり、その間に市況が悪化するなど売却タイミングを逃すリスクがある。

一方で、入居者がいる状態で売却することを「オーナーチェンジ」と呼びます。

投資家向けの収益物件(一棟アパート)の売買は、このオーナーチェンジが一般的です。買い手も、購入後すぐに家賃収入が得られることを期待しています。

よって、「無理に全室の入居を待って(=満室にして)から売る」必要はありません。 むしろ、空室がいくつかある状態でも、「このエリアなら、この家賃設定ですぐに埋まる」という客観的な根拠(周辺の募集状況など)を提示できれば、買い手は納得して購入してくれるケースがほとんどです。

築浅物件の売却で気をつけること

「築浅」の物件は、建物が新しく、金融機関の融資も付きやすいため、買い手からの人気が高く、高く売れやすい傾向があります。

ただし、注意点があります。それは、「所有期間5年」の壁です。

新築や築浅で購入された場合、すぐに売却すると「短期譲渡所得」となり、高い税率が課されてしまいます。築浅で高く売れたとしても、税金を引いた後の手残りが少なくなっては意味がありません。

築浅物件こそ、売却のタイミング(特に税制面)には細心の注意が必要です。

 

まとめ:出口戦略を意識した不動産投資で、資産形成を成功に導く

今回は、不動産投資の成功を左右する「一棟アパートを高く売るコツ」と「売却益を最大化するタイミング」について、オーナー様が「戦略的に」実行できるノウハウに絞って解説しました。

  • 不動産投資の利益は「運用益」と「売却益」の合計で決まる。
  • 高く売るコツは、「バリューアップ」「適切な修繕」「レントロール整備」「買い手視点(融資)」「パートナー選び」の5つ。
  • 売却益を最大化するタイミングは、「市況」「税制(所有期間5年)」「個人の事情」の3軸で判断する。
  • 特に「減価償却」と「譲渡所得税」の仕組みを理解し、手残りをシミュレーションしておくことが重要。

不動産投資は、購入(入口)から売却(出口)までを一つのプロセスとして捉え、長期的な視点で戦略を立てることが成功の鍵です。

「自分が所有している物件の、今の売却相場を知りたい」
「出口戦略まで見据えた、次の物件購入を相談したい」
「そろそろ売却を検討しているが、税金面も含めて最適なタイミングを提案してほしい」

私たちは、不動産投資の専門家として、オーナー様一人ひとりの状況に合わせた最適な出口戦略のご提案や、資産形成のサポートを行っております。ご所有物件の価値を最大化し、確かな資産形成を次のステージに進めたいとお考えの方は、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。