サラリーマン大家の戦略的「確定申告」。青色申告65万円控除のカギを握る「事業的規模(5棟10室)」とは?

「不動産投資を始めると、確定申告が必要になるのが面倒だ……」 

日々の業務に忙しいサラリーマン投資家の方にとって、年に一度の確定申告は大きな心理的ハードルかもしれません。

しかし、この確定申告こそが、サラリーマン大家にとって最強の武器になることをご存じでしょうか。特に「青色申告」を活用することで、経費とは別に最大65万円もの所得控除を受けることが可能になります。

ただし、この恩恵をフル活用するには、税務署が認める「事業的規模」という基準をクリアしなければなりません。実は、区分マンションを少しずつ買い足していくよりも、ある方法を取ることで、一発でこの基準に到達する「近道」が存在します。

この記事では、初めての確定申告に備える基礎知識から、最大の節税メリットを得るための「5棟10室」という戦略的ラインについて解説します。

【この記事はこんな人におすすめ】

  • 年収1,000万円以上で、不動産投資による節税効果を最大化したい方
  • 「青色申告」がお得だと知っているが、具体的な要件や手続きが分からない方
  • 区分マンションと一棟アパート、どちらから始めるべきか税制面で迷っている方
  • 将来的に不動産投資を拡大し、事業として安定させたいと考えている方

【目次】

  1. サラリーマン大家が「確定申告」をする本当のメリット
  2. 「白色」と「青色」の違いは? 狙うべきは65万円控除
  3. 高い壁? 「事業的規模(5棟10室)」の基準とは
  4. 区分ワンルーム10戸 vs 一棟アパート1棟、どっちが近道?
  5. 初めてでも慌てない! 開業届と申告までの流れ
  6. まとめ:税制優遇を味方につける「規模」の戦略を

 

Contents

サラリーマン大家が「確定申告」をする本当のメリット

会社員の場合、通常は年末調整で税金の手続きが完了するため、確定申告に馴染みがない方も多いでしょう。しかし、不動産投資を行う場合、原則として確定申告が必要です。

そもそも、不動産投資には「取得税」「固定資産税」など様々な税金が関わりますが、確定申告で扱うのは主に「所得税」です。 不動産投資に関わる税金の全体像や、それぞれの計算方法について整理したい方は、先に以下の記事をご確認ください。

リンク:【不動産投資の税金 完全ガイド】サラリーマン投資家が知るべき税金の種類と節税の仕組み。

不動産所得と損益通算の流れ

不動産投資で発生した赤字(減価償却費などの経費が家賃収入を上回った分)は、本業の給与所得から差し引くことができます。これを「損益通算」と呼びます。 課税所得が圧縮されることで、結果として源泉徴収されていた所得税の還付を受けられる可能性があります 。また、住民税についても所得に応じて負担が軽減される仕組みとなっています 。

損益通算の詳しいロジックについては、以下の記事で解説しています。

リンク:なぜ不動産投資は節税につながるのか?資産を守る「減価償却」と「損益通算」の仕組みを解説

 

「白色」と「青色」の違いは? 狙うべきは65万円控除

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。 結論から言えば、不動産投資を行うなら圧倒的に「青色申告」が有利です。

青色申告の3つのメリット

事前に承認申請書を提出し、一定の帳簿をつけることで、以下の特典が得られます。

  1. 青色申告特別控除(最大65万円): 利益から最大65万円を差し引くことができます。所得税率が高い方ほど、この控除による課税所得の圧縮効果は大きくなり、最終的な手残りを増やす一助となります 。※具体的な節税額は個人の所得状況に依存します。
  2. 青色専従者給与: 生計を共にする配偶者や親族に支払う給与を経費にできます(※事業的規模の場合)。
  3. 純損失の繰越控除: 赤字が出た場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せます。

控除額は「10万円」と「65万円」の2段階

青色申告なら無条件で65万円引けるわけではありません。

  • 10万円控除: 簡易な帳簿でOK。規模は問わない。
  • 55万円(65万円)控除: 複式簿記での記帳が必要。かつ「事業的規模」であること。 (※e-Taxによる電子申告を行えば65万円、それ以外は55万円)

つまり、最大のメリットを享受するには、「複式簿記」という事務的なハードルと、「事業的規模」という規模のハードルを越える必要があります。

青色申告の特典について: No.2070 青色申告制度(国税庁)

高い壁? 「事業的規模(5棟10室)」の基準とは

では、税務署が認める「事業的規模」とは具体的にどれくらいでしょうか? 一般的に「5棟10室基準」と呼ばれています。

5棟10室基準の内容

以下のいずれかの規模を満たしている場合、事業的規模として認められます。

  • 戸建て(貸家): 5棟以上
  • アパート・マンション: 10室以上

「区分マンション1室」や「戸建て1棟」だけでは、事業的規模とはみなされず、青色申告をしても控除額は基本的に「10万円」止まりとなります。 65万円控除という強力な節税パスポートを手に入れるには、この「10室」というラインをクリアすることが戦略上の最重要課題となります。

事業的規模の判定基準: No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の区分(国税庁)

区分ワンルーム10戸 vs 一棟アパート1棟、どっちが近道?

区分ワンルーム10戸 vs 一棟アパート1棟、どっちが近道?
ここで、これから不動産投資を始める方が直面する「物件選び」の分岐点があります。 事業的規模(10室)を目指すにあたり、以下の2つのパターンを比較してみましょう。

パターンA:区分マンションを1室ずつ買い増す

都心の区分マンションなどを1室ずつ購入し、時間をかけて10室を目指す方法です。

  • メリット: 少額から始められる、エリアを分散できる。
  • デメリット: 10室揃えるには数年〜十数年かかるため、その間は65万円控除が使えません。また、管理組合がバラバラになるため管理の手間が増大し、10回分の購入手続き(融資審査含む)が必要です。

パターンB:最初から「一棟アパート(10室程度)」を購入する

1棟で8〜10室以上の部屋数があるアパートをまるごと購入する方法です。

  • メリット: 1棟で10室以上の規模があれば、一般的に初年度から「事業的規模」として扱われる基準を満たします 。これにより、早期に青色申告の最大控除を目指せる体制が整います 。最初から65万円控除の権利を獲得できるため、スタートダッシュの節税効率が段違いです。管理会社も一本化でき、サラリーマン大家としての手間も最小限に抑えられます。
  • デメリット: 区分に比べて初期投資額が大きくなります。

結論:効率を求めるなら「一棟」が近道

「節税メリットをフル活用したい」「手間をかけずに効率よく運用したい」と考える高年収サラリーマンの方にとって、一棟アパート投資は、最短ルートで青色申告の恩恵を最大化できる合理的な選択と言えます。

一棟アパートのメリットについては、減価償却(経費計上)の観点からも以下の記事で詳しく解説しています。

リンク:不動産投資の鍵は「減価償却」にあり。耐用年数による節税効果の違いと物件選びの戦略

初めてでも慌てない! 開業届と申告までの流れ

最後に、実際にサラリーマン大家としてデビューするための手続きについて解説します。 どんなに良い物件を買っても、手続きを忘れると特典を受けられませんので注意しましょう。

① 開業届と青色申告承認申請書の提出

物件の引き渡しを受けたら、速やかに以下の書類を管轄の税務署へ提出します。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届): 事業開始から1ヶ月以内
  • 所得税の青色申告承認申請書: 事業開始から2ヶ月以内(またはその年の3月15日まで)

特に「青色申告承認申請書」は期限を過ぎると、その年は白色申告(または特典なしの青色)になってしまうため、必ず開業届とセットで提出しましょう。

② 日々の帳簿付け(複式簿記)

「複式簿記なんて難しくてできない」と思われるかもしれませんが、現在はクラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても銀行口座やクレジットカードと連携して自動的に帳簿を作成できます。 また、事業的規模(一棟アパート所有など)であれば、税理士に丸投げして、その費用を経費計上するのも賢い選択です。プロに任せることで申告ミスを防ぎ、本業に専念できます。

③ 確定申告書の提出(毎年2月16日〜3月15日)

作成した決算書と申告書をe-Taxなどで提出します。 初めての場合は「売買契約書」「家賃送金明細」「ローンの返済予定表」「管理費の領収書」などの必要書類を整理しておくことから始めましょう。
※個別の税務処理については、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

青色申告承認申請書の期限: 所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)

まとめ:税制優遇を味方につける「規模」の戦略を

サラリーマン大家にとって、確定申告は単なる義務ではなく、資産形成を加速させる重要なイベントです。

  • 青色申告65万円控除を目指すことが、手残りを増やす第一歩。
  • そのためには「事業的規模(5棟10室)」の壁を越える必要がある。
  • 区分マンションを積み上げるより、「一棟アパート」を購入する方が、一瞬で基準をクリアできる。

「どうせやるなら、最初から税制メリットを最大限に享受したい」
「自分の属性(年収)で、事業的規模のアパート購入は可能なのか?」

そうお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。 初めての確定申告に向けたサポートはもちろん、お客様の資産背景に合わせ、規模のメリットを活かした「一棟物件」の選定をサポートさせていただきます 。
※具体的な税務スキームや申告の詳細については、提携税理士と連携の上で、法令を遵守したアドバイスを行います 。

【免責事項】 本記事における減価償却や節税の解説は、一般的な税制に基づくシミュレーションであり、実際の納税額や節税効果を保証するものではありません 。個別の税務判断については、必ず税理士または所轄の税務署にご相談ください 。