将来のための資産形成を考え、不動産投資の勉強を始めたものの、
「税金が複雑そうで難しそう。」
「サラリーマンでも節税になるという話は本当だろうか。」
といった疑問や不安をお持ちではないでしょうか。
株式投資のご経験がある方でも、不動産投資特有の税金については、知識が追いつかないと感じるかもしれません。本業でお忙しい中、専門書を読み解く時間も限られていることでしょう。
不動産投資において、税金の知識は「リターン」に直結する重要な要素です。知っているかどうかで、手残りが大きく変わることも少なくありません。
この記事では、不動産投資にかかる税金の種類や、経費として認められる範囲、そして特にサラリーマン投資家の方が気になる「節税」の仕組み(損益通算)について、時系列に沿ってわかりやすく解説します。
税金に対する漠然とした不安を解消し、ご自身にとって不動産投資が有効な選択肢であるかを見極めるための一助となれば幸いです。
【この記事はこんな人におすすめ】
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【目次】
- 【全体像】不動産投資にかかる税金の「種類」と「いつ払うか」
- 【取得時の税金】物件購入時にかかる3つの税金
- 【運用中の税金】所有中にかかる税金と経費の考え方
- 【サラリーマン必見】不動産投資で「節税」ができる仕組み
- 【重要】不動産投資の「経費」の考え方と具体例
- 【売却時の税金】出口戦略で必須の「譲渡所得税」
- サラリーマンでも「確定申告」は必要か?
- まとめ:税金の知識を味方につけ、賢い不動産投資を
Contents
【全体像】不動産投資にかかる税金の「種類」と「いつ払うか」
不動産投資を始めるにあたって、まず押さえておきたいのが「いつ、どんな税金を支払う必要があるのか」という全体像です。株式投資と異なり、不動産投資の税金は「取得時」「運用中」「売却時」という3つのフェーズで発生します。
まずは、それぞれのタイミングでどのような不動産投資の税金の種類があるのかを把握しましょう。
① 取得時:購入時に一度だけかかる税金
物件を購入する、まさにその瞬間に発生する税金です。主に以下の3つが挙げられます。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
これらは物件価格のほかに必要となる「諸費用」の大部分を占めます。資金計画を立てる上で非常に重要です。
② 運用中:所有している間、毎年かかる税金
物件を所有し、家賃収入を得ている間にかかる税金です。
- 固定資産税・都市計画税(毎年)
- 所得税・住民税(不動産所得に対して)
特に所得税・住民税は、サラリーマンの方の「節税」に大きく関わってくる部分です。
③ 売却時:物件を売却した時にかかる税金
物件を売却して利益(売却益)が出た場合にのみかかる税金です。
- 譲渡所得税(所得税・住民税)
それぞれの税金について、もう少し詳しく見ていきましょう。
【取得時の税金】物件購入時にかかる3つの税金
ここからは、物件取得時にかかる税金について解説します。不動産投資にかかる税金として、最初に出会うのがこのフェーズです。
不動産取得税(軽減措置あり)
不動産を取得(購入、新築、贈与など)した際に、一度だけ課税される地方税です。物件を取得してから早ければ数ヶ月後に納税通知書が届きます。 「不動産投資の税金は、いつ払うのか」といった疑問に対する答えの一つが、この不動産取得税です。
- 税額の目安: 原則として「固定資産税評価額 × 4%」
今の時期だけの軽減税率(2027年3月31日まで)
現在は軽減措置が適用されており、計算の元となる「評価額」と、掛け算する「税率」の両方で優遇を受けられる場合があります。
- 【税率の軽減】 本来4%の税率が、土地と住宅(建物)については 3% に引き下げられます。
- 【評価額の軽減】 さらに「宅地(土地)」については、税額計算の元となる評価額を 1/2 にして計算できる特例があります。
※詳細な要件は物件の状況によって異なるため、購入前に必ず確認が必要です。
つまり、投資用の土地(宅地)購入においては、「評価額を半分にした上で、3%の税率をかける」という計算になり、大幅に負担が軽減されます。
ポイント:不動産取得税の軽減措置
一定の要件(床面積や耐震基準など)を満たす新築住宅や中古住宅の場合、課税標準額や税額が控除される軽減措置があります。適用されるかどうかで納税額が数十万円単位で変わることもあるため、購入前に物件が要件を満たすかを確認することが重要です。
出典: 不動産取得税(東京都主税局)
注記: 物件の床面積や耐震基準により要件が異なるため、詳細は各自治体へご確認ください 。
登録免許税
購入した不動産が自分のものであることを法的に示すため、「所有権移転登記」などを行います。この登記手続きの際に課税されるのが登録免許税です。こちらも期間限定の軽減措置がありますので、資金計画を立てる際は以下の税率を目安にしてください。
- 税額の目安:
- 土地(売買):固定資産税評価額 × 1.5%(※2026年3月31日まで)
- 建物(売買):固定資産税評価額 × 2%
- ローンを組む場合:抵当権設定登記として 借入額 × 0.4%(※一定の軽減措置あり)
印紙税
不動産売買契約書や、ローンを組む際の金銭消費貸借契約書など、特定の文書を作成する際に課税される税金です。契約書に記載された金額に応じて、収入印紙を貼り付けて納付します。
【運用中の税金】所有中にかかる税金と経費の考え方
次に、不動産を所有している間、つまり家賃収入を得ている「運用中」にかかる税金です。
固定資産税・都市計画税(評価額とは?)
毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課税される地方税です。
- 固定資産税: 市町村が定める「固定資産税評価額」を基準に計算されます。
- 税額 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
- 都市計画税: 主に市街化区域内に不動産を所有している場合に課税されます。
- 税額 = 固定資産税評価額 × 0.3%(上限税率)
これらは、毎年4月~6月頃に納税通知書が届き、一括または年4回に分けて納付するのが一般的です。
知っておきたい「減額」のポイント
住宅用地(人が住むための土地)については、土地の税金が大幅に減額される特例があります。また、新築住宅についても一定の要件を満たせば税額が軽減されます。「投資用物件だから高い」とは限らないため、購入時にシミュレーションを確認しておきましょう。
所得税・住民税(不動産所得の計算)
家賃収入から不動産投資の経費を差し引いた利益を「不動産所得」と呼びます。この不動産所得に対して、所得税(国税)と住民税(地方税)が課税されます。
不動産所得の計算式: 不動産所得 = 総収入金額(家賃収入など) - 必要経費
サラリーマンの方の場合、本業の給与所得と、この不動産所得を合算して総所得が計算され、最終的な納税額が決定します。
【サラリーマン必見】不動産投資で「節税」ができる仕組み

年収1,000万円以上のサラリーマンの方が不動産投資に関心を持つ大きな理由の一つが、このサラリーマンにとっての節税効果でしょう。
なぜ不動産投資で節税が可能になるのか、その鍵は「減価償却費」と「損益通算」という2つのキーワードにあります。
仕組み①:魔法の経費「減価償却費」
不動産投資の経費の中で、最も特徴的なのが減価償却費です。
建物や設備は、時間の経過とともに価値が減少していきます。その減少分を、会計ルールに基づき、一定期間(耐用年数)にわたって分割して経費として計上できるのが減価償却費です。
最大のポイントは、「実際にはお金が出ていっていない(キャッシュアウトがない)のに、帳簿上は経費として計上できる」という点です。
仕組み②:「損益通算」で給与所得と相殺できる
仮に、家賃収入から必要経費(減価償却費を含む)を差し引いた結果、不動産所得が「赤字」になったとします。この赤字(損失)を、本業である給与所得と相殺(合算)できる仕組みを「損益通算」と呼びます。
※ただし、赤字のうち「土地を取得するための借入金利子」に相当する部分は損益通算ができないという重要なルールがあります 。
なぜ所得税が還付されるのか?
例えば、以下のようなサラリーマン投資家Aさんがいたとします。
- 給与所得:1,000万円
- 不動産所得:▲200万円(赤字) ※減価償却費の計上による
損益通算を行うと、Aさんのその年の総所得は、 1,000万円(給与所得) + (-200万円)(不動産所得) = 800万円 となります。
Aさんは会社員として、すでに「給与所得1,000万円」を前提とした所得税を源泉徴収(天引き)されています。しかし、確定申告で損益通算を行うことにより、課税対象の所得が「800万円」に減額されます。
その結果、払いすぎていた税金(1,000万円に対するもの)と、本来払うべき税金(800万円に対するもの)との差額が、「還付」として戻ってくるのです。これが、不動産投資をきっかけに所得税の還付が受けられる仕組みの正体です。
重要:住民税は「還付」ではなく「減額」
所得税は確定申告後に現金が振り込まれます(還付)が、住民税は「翌年の給与から天引きされる金額が減る」という形で節税効果が現れます。 住民税については、手元の現金がすぐに増えるわけではない点に注意しましょう。
損益通算についての詳しい内容は関連する下記の記事をご覧ください。
リンク:なぜ不動産投資は節税につながるのか?資産を守る「減価償却」と「損益通算」の仕組みを解説
注意点:節税効果は「いつまでも続かない」
この節税効果は非常に魅力的ですが、注意点もあります。
- 減価償却費が計上できる期間は決まっている: 耐用年数が経過すると、減価償却費は計上できなくなります。その後は不動産所得が黒字化しやすく、納税額が増える可能性があります。
- キャッシュフロー赤字との違い: 減価償却費による「帳簿上の赤字」ではなく、家賃収入よりもローン返済や経費支出が多い「実際のキャッシュフロー赤字」となって節税している場合、それは単に資産を減らしているだけです。節税目的だけの投資は危険です。
- 【要注意】土地のローン金利は損益通算できない: ここが最大の落とし穴です。不動産所得が赤字になった場合、その赤字金額のうち「土地を取得するための借入金の利子(土地負債利子)」に相当する部分は、損益通算(給与所得との相殺)ができません。 「思ったより節税にならなかった」というケースの多くがこれに該当するため、事前の確認が必須です。
【重要】不動産投資の「経費」の考え方と具体例
不動産所得を正しく計算し、節税効果を最大化するためには、「不動産投資の経費」を正確に把握することが不可欠です。
不動産所得を計算するために必要な「経費」
不動産所得は「総収入金額(家賃収入など) - 必要経費」で計算されます。この「必要経費」が多ければ、それだけ所得(課税対象額)を圧縮できます。
経費として認められるのは、「不動産収入を得るために直接かかった費用」です。 主なものには以下のようなものがあります。
- 税金: 固定資産税、都市計画税、不動産取得税 など(※所得税・住民税は経費になりません)
- ローン関連: ローン金利、ローン事務手数料(※元本返済は経費になりません)
- 管理・修繕費: 管理会社への委託費、原状回復費用、修繕費
- 保険料: 火災保険料、地震保険料
- 減価償却費: 建物や設備の減価償却費
経費にできるもの・できないものの詳しい一覧は?
上記以外にも、不動産会社との打ち合わせや物件管理のための交通費、通信費、関連書籍の購入費(新聞図書費)なども経費に計上できる可能性があります。
特に会社員の方が不動産投資を行う際、ポイントとなるのが「家事按分(かじあんぶん)」という考え方です。
これは、自宅兼事務所の家賃やスマートフォンの通信費など、プライベートと事業の両方で使用している支出について、「事業で使用した割合」だけを経費として計上するルールです。
例えば、管理会社との連絡に個人のスマートフォンを使用している場合、その使用頻度や時間に基づいて、通信費の一部を経費にするといった処理を行います。
ただし、どこまでを経費とするかの線引きは非常に曖昧であり、税務調査でも指摘されやすいポイントです。「これも経費になるはずだ」と自己判断で過大に計上することは避け、判断に迷う場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
詳しくは関連する下記の記事をご覧ください。
リンク:不動産投資の鍵は「減価償却」にあり。耐用年数による節税効果の違いと物件選びの戦略
【売却時の税金】出口戦略で必須の「譲渡所得税」
不動産投資は「出口戦略(いつ売却するか)」も重要です。物件を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」が課税されます。
譲渡所得の計算式: 譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
この「取得費」には、購入時の物件価格から、今までの運用期間中に経費計上した「減価償却費」の合計額を差し引いた金額が入ります。
ポイントは、所有期間によって税率が大きく異なる点です。
- 短期譲渡所得: 所有期間が5年以下の場合(税率 約39%)
- 長期譲渡所得: 所有期間が5年を超える場合(税率 約20%)
※この「5年」は、売却した年の1月1日時点で判定されます 。単純な所有日数ではないため、売却タイミングの判断には注意が必要です 。
運用中に減価償却費で節税していても、売却時に短期で売ってしまうと高い税率が課され、トータルで損をしてしまう可能性もあります。
サラリーマンでも「確定申告」は必要か?
ここまでの解説で、不動産投資と「確定申告」が切っても切れない関係にあるとお分かりいただけたかと思います。
不動産所得が赤字でも確定申告(還付申告)を
サラリーマンの方で、給与所得以外の所得(不動産所得など)が年間20万円を超える場合は、確定申告が「義務」となります。
では、不動産所得が赤字(20万円以下)の場合はどうでしょうか。 義務ではありませんが、前述の「損益通算」による所得税の還付を受けるためには、必ず「確定申告」を行う必要があります。
事業的規模(5棟10室)と青色申告
不動産投資の規模が大きくなり、いわゆる「5棟10室」の基準(戸建てなら5棟以上、アパート・マンションなら10室以上)を満たすと、「事業的規模」とみなされる可能性があります。
事業的規模になると、「青色申告」を選択している場合に、最大65万円の特別控除を受けられるなど、税務上のメリットがさらに大きくなります。
詳しくは関連する下記の記事をご覧ください。
リンク:サラリーマン大家の「確定申告」戦略。青色申告65万円控除のカギを握る「事業的規模(5棟10室)」とは?
まとめ:税金の知識を味方につけ、賢い不動産投資を
今回は、不動産投資にかかる税金の種類、経費の範囲、そしてサラリーマン投資家にとっての節税の仕組みについて解説しました。
- 不動産投資の税金は「取得時」「運用中」「売却時」の3つのフェーズで発生する。
- サラリーマンの節税は、「減価償却費」を経費計上し、不動産所得の赤字を給与所得と「損益通算」することで、所得税の還付を狙う仕組みである。
- 節税効果を正しく得るには、「経費にできるもの」と「できないもの」の区別が重要。
- 節税効果には期限(減価償却期間)があり、売却時には「譲渡所得税」も考慮する必要がある。
税金と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、その仕組みを正しく理解することは、ご自身の資産を守り、育てる上で強力な武器となります。
本業でお忙しい中、これらの複雑な税務処理や、ご自身の状況に最適な節税対策をすべてご自身で判断するのは大変な労力がかかります。
「自分にとって、不動産投資は本当に有効なのだろうか?」
「税金や経費について、もっと具体的に相談したい」
そのように感じられた方は、ぜひ一度、不動産投資の専門家に詳しい話を聞いてみてはいかがでしょうか。
【免責事項】本記事の内容は一般的な解説であり、特定の状況における税務判断を保証するものではありません 。個別の税務については、必ず税理士または最寄りの税務署へご相談ください 。
- リンク: 税についての相談窓口(国税庁)
- リンク: 日本税理士会連合会(税理士検索)



